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日本酵素栄養学協会からお伝えしたいこと3.腸内環境を整える

こころも身体も健康にいるためのポイントは‘腸’にありました。

ここまでわかった!腸のはたらき

食事から栄養分を吸収しエネルギーにしてくれる他に、腸には様々な働きがあることがわかってきました。私達が心身とも健康に生きていくために欠かせない重要な機能をもっているのです。

口から肛門までの消化器官は、入口と出口で外界と接しています。外界と繋がって、異物や毒物が多く存在する管腔内から身体を守るのが腸管免疫です。私たちの免疫機能全体の約80%を占めると言われています。そしてそれは腸内フローラとして腸管内に存在する微生物たちの働きによっても大きく左右されるのです。

「腸内細菌」とは?

私たちの腸に棲みついた数多くの細菌をまとめて「腸内細菌」と呼びます。これまでは腸内細菌の数は約100兆個とされていましたが、遺伝子を元に調べられるようになり約1000兆個、重さにして2㎏近くもあることがわかってきました。

腸内細菌類を分類する際に、私達の身体や腸内環境に対する影響の善し悪しによって、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3つに大きく分類されます。
善玉菌は人体や腸に有益となる細菌類であり、悪玉菌は人体や腸に悪影響を及ぼす細菌類であり、日和見菌はどっちつかずの菌とも言われて善玉菌と悪玉菌の優勢な方へと加担する細菌類となります。

私達の腸内環境は腸内細菌のバランスで決まるのですが、その理想的な割合は、善玉菌:悪玉菌:日和見菌=20~25:5~10:70くらいであり、常に善玉菌が優勢な状態を保ち続けることが大切になります。しかし、何らかの原因で悪玉菌が優勢になってしまうと腸内の腐敗が進み、人の健康に有害な物質が増えてしまいます。それは腸内環境を悪化させるだけでなく、腸管からその有害物質が吸収されて体内に取り込まれると肝臓や腎臓などにも負担を与えてしまい、老化を促進させたり様々な生活習慣病の原因になってしまうこともあるのです。

「腸内フローラ」とは?

腸内細菌叢とも言い、腸内細菌が腸の壁面に種類ごとに集まった様子がさまざまな植物が群れて咲く花畑のように見える事から「フローラ」と呼ばれています。

私たち人類にそれぞれ個性があるように、腸内フローラにもいろいろ個性があって、どんな腸内細菌がどのくらいいるのかは「人種差」や「個人差」がとても大きく、またその人の食生活習慣や健康状態で左右されているのです。
人種差については、例えば、難消化性でんぷんや食物繊維を分解する酵素を持つ微生物は、それらを多く食べている東南アジア人の腸内に多く存在していますし、海苔に含まれている多糖類を分解する酵素を持つ微生物は、昔(8世紀ころ)から海苔を食べている日本人の排泄物からしか見つかっていないと言われています。その土地の食物を選択することが大事と言われています。

個人差については、出生時の産道の状態や出生後の母乳などで母親から引き継がれます。そのため、可能な限り帝王切開でなく自然分娩での出産が望ましく、また初乳を与えて、人工乳でなく母乳で育てることが大事と言われています。そして生後3年の間にどんな腸内細菌を持つかという組成が決まってしまうということがわかってきました。
そして、腸内フローラはその後も成長や加齢とともに変化し、生活習慣や生活環境などによっても徐々に変化をしていきます。特に、消毒薬や抗生物質を使用したりすると、微生物たちの多様性が激しく損なわれてしまうため、腸内フローラを構成する腸内細菌たちの絶妙な勢力バランスにも大きな影響を与えてしまいます。

この微生物たちの多様性が失われるということは、実は私たちの想像以上に大きな事件であって、私たちが様々な環境の変化に適応できる能力を失ってしまうことにも繋がるのです。

腸内環境を整えるために大事なこと

腸内フローラの状況に影響を与えるものは本当に様々で幅広いのですが、それを考えるうえで前提として重要なのは、私たちと腸内の微生物たちがこの身体で「共生」していて、私たちはこの微生物たち無しでは生きてはいけないという事実な

このように、私たちが体内で作りだす消化酵素だけでは分解できない食物の栄養素は、それを分解できる腸内の微生物の助けを借りることで初めて栄養素として活用することができるので、やはり昔ながらに食べ慣れているのです。

私たちが微生物たちから有益なものを得て健康に生きていきたいと思うのであれば、その有益なものを作り出してくれる微生物たちにとって居心地のいい環境を提供してあげないといけないのです。

そのために、やはり一番大事なのは、口から入れる食物の選択になります。そして、その食物がきちんと消化・吸収されていて、未消化の食物がそのまま大腸に流れ込んでいないか、また不要になった腸内残留物が便秘などでずっと留まっていないかということも大事になります。

それには自律神経(活動をしたり緊張する際に優位になる交感神経と、リラックスすると優位になる副交感神経のバランス)が整っているかが大きく影響してきます。そして、他にも体が冷えて低体温になっていないか(体温は36度台の後半が理想です)、普段から身体を動かしたりしているか、ストレッチやマッサージでお腹の緊張をほぐしたりしているかなど、様々な要因が実はいろんな面で影響しているのです。

善玉菌を増やす食生活

腸内フローラを整えるために重要な点は、善玉菌の活性化です。そのために、食生活で特に考慮すべき事柄として次の2点があげられます。1点目は、善玉菌を補助する働きのある乳酸菌などを摂取して腸まで届かせること。2点目は、腸内にいる善玉菌が繁殖しやすいように、その善玉菌たちの餌となる食べ物を食べることです。

最近はそれぞれに対応するような、プロバイオティクス(Probiotics)・プレバイオティクス(Prebiotics)という言葉も広まってきています。

プロバイオティクス

プロバイオティクスとは「生きたまま腸まで届いて、腸内環境を整えるなどの良い働きをする微生物やそれを含む食品」のことです。

このプロバイオティクスの多くは、乳酸菌やビフィズス菌などで、食材としては昔ながらの発酵食品に多く、納豆、キムチ、糠漬け、味噌、醤油、酒かすや甘酒などがあります。ただし、商品化する加工段階や調理による加熱によって微生物が死滅したり、商品によっては味付けのために化学調味料などが多く含まれているものもあるので、選ぶ際には注意が必要です。

ヨーグルトやチーズなどにも乳酸菌は含まれますが、その材料の牛乳自体が人間にはあまり合わず、特に日本人は乳糖を分解するラクターゼという酵素を持っていない人も多いため、乳酸菌の効果はあると言われていますが、取り過ぎないように注意して体質に合わない場合は控える方が良いと思います(便秘が改善したと思っていても、単に牛乳によって下痢気味になっているだけで腸内環境が改善されていない場合もあります)。

乳酸菌やビフィズス菌などの微生物は胃酸によって一部は死滅すると言われていますが、死んだ善玉菌の死骸であっても腸まで届くと、もともと存在する善玉菌の餌になって増殖を助けるため、生菌にこだわり過ぎるよりも積極的に量を摂取していくことが大事となります。
ただ、摂取したプロバイオティクスがそのまま常在菌になることは無いと言われています。

プレバイオティクス

プレバイオティクスとは「消化や吸収をされずに大腸まで届いて、もともと棲息している有益菌の栄養源となって腸内環境を整えるなどの良い働きをする栄養素」のことです。このプレバイオティクスには、私たちの消化管で消化吸収されないオリゴ糖や食物繊維が含まれます。

このうちオリゴ糖は、単糖類が3~10個くらい繋がった炭水化物なのですが、その重要な特徴が消化されないまま大腸に届いて、腸内のビフィズス菌の餌になることです。

もう1つの食物繊維は、多糖類のでんぷんと同じようにブドウ糖が100%で横に長く繋がった構造をしているのですが、そのブドウ糖同士の結合の仕方が違うため、私たちは消化することができない栄養素になります。

この食物繊維には不溶性と水溶性の2種類があり、善玉菌などの餌になるだけではなく、腸内環境に対して数多くの重要な働きをしているのです。

不溶性食物繊維には水分を吸収して膨れる性質があるため、消化管で膨らむことで満腹感を与えるとともに便の量を増やし、結腸での蠕動運動を促して便通を改善させる効果があります。

水溶性食物繊維には食べた物の水分を抱き込んでゲル化して粘着性をもつ性質があり、満腹感を与えるとともに、糖が吸収されるのを遅らせたり、胆汁排泄を促すことでコレステロールの吸収を抑えたりしていますが、この水溶性の食物繊維が善玉菌などの餌となって発酵されるのです。

水溶性食物繊維を多く含む食品には、野菜ではごぼう・さつまいも・切り干し大根・ニンジン・オクラ・アボカドなど、果物ではバナナ・りんごなど、穀類では大麦・ライ麦など、豆類では大豆・インゲン豆など、海藻類ではわかめ・昆布などがあります。

悪玉菌を増やさない生活習慣

腸内フローラを整えるためには、善玉菌を増やすとともに、悪玉菌が増えすぎないようにしていく必要があります。

そのためには、食中毒の原因にもなるような悪玉菌を直接そのまま身体の中に入れないようにするのはもちろんですが(腸内フローラが善玉菌優位の状態であればその善玉菌が悪玉菌の増殖を防いでくれます)、悪玉菌の餌となるものをできる限り減らしていくことが大事になります。

悪玉菌の餌になるものとして代表的なものは、高たんぱく質で高脂肪の食べ物なので、特にお肉類は食べすぎに注意する必要があります。
難消化性であるオリゴ糖や食物繊維は善玉菌の餌になるので良いのですが、その他の未消化物の大部分は実は悪玉菌の餌になってしまいます。

そのため、何よりもまず大事なのが食べすぎないことです。そして食事ではお肉や揚げ物などの摂りすぎに注意するのと同時に、食べたたんぱく質や脂肪をきちんと消化できるように、胃酸をきちんと分泌させ、胆汁も含めて消化酵素をちゃんと分泌させる必要があります。

そして私たちの胃腸の機能は、自律神経系のうちリラックスの副交感神経が担当しているので、食事はやはり家族や友達や仲間たちと一緒にゆっくり楽しむのが理想ですね。そして胃腸を冷やさないように注意することも大事です。

また、人工的な砂糖の摂りすぎや人工甘味料の使用も悪玉菌を増やすので控えていくようにしましょう。
食生活の乱れ、ストレス、運動不足、睡眠不足、不規則な生活も悪玉菌を増やすことに繋がります。

美腸のつくり方!

悪玉菌を増やさない生活習慣に注意しつつ、やはり一番大事なのは口から入れる食物の選択になります。

〝美腸〟になるためには腸内細菌を意識した食生活が大切になります。自分の腸内細菌を上手に育てて体内の酵素を増やすことも大切になってきます。

腸内細菌は食事から得られる栄養素を餌として、たくさんの酵素を作ってくれますのでそれを助けるような環境を整えることが大事になります。

腸内には1000種類以上もの腸内細菌がいるといわれています。それらの細菌ごとに餌となる栄養素も異なりますので、多種多様の食材をバランスよく摂ることも効果的です。

私たち日本人にとっては、和食中心の食生活が理想的です。和食に多く使われている伝統的な発酵食品や発酵調味料も、腸内細菌を育てるのに最適な食材です。手間暇をかけた本物の発酵食品には乳酸菌や、いろいろな種類のオリゴ糖や食物繊維が含まれています。

〝美腸〟をつくるためには、体外酵素として摂り入れる「生の食材」、プロバイオティクスの「乳酸菌」「ビフィズス菌」、プレバイオティクスの「オリゴ糖」「食物繊維」、微生物のチカラで腸を整える「発酵食品」、そして腸内の炎症を抑えてくれる良性の「油脂(オメガ3系など)」などをバランスよく摂ることが大切になってくるのです。

腸を整えて、心身ともに健康になりましょう!