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日本酵素栄養学協会からお伝えしたいこと6.ファスティングについて

生物が生命を維持するためには、外部から栄養素を取り込み、消化吸収してエネルギーを生産する必要があります。生物は生涯変化し続けますので、飢餓等により外部からの栄養素補給が途絶えた場合でも、生きるためにエネルギーを生産し続けなければなりません。その材料は、どのようにして捻出されるのでしょうか。

2016年大隅良典博士が、ノーベル医学生理学賞を授与されました。受賞理由は、「オートファジー」メカニズムの解明です。
ヒトの歴史は飢餓との戦いで、美味しい好きなものを満腹になるほど食べることが可能になったのはほんの半世紀ほど前からです。
オートファジーの語源はギリシャ語で、オートは「自分」、ファジーは「食べる」を意味し、日本語では「自食作用」と訳されています。
飢餓に直面した場合細胞中の不要になったたんぱく質や細胞小器官を分解し、当面必要なエネルギーやたんぱく質の材料となるアミン酸を確保する機能がオートファジーです。

現代人の多くが所有していますスマホやパソコンは、新品から使用頻度が増えるに従いデータのゴミや不要になったファイルが蓄積され性能が劣化して反応が鈍ります。この場合不要なファイルをゴミ箱に捨てて消去しますが、同じようにヒト細胞中の加齢に伴い増加する不要になったあるいは設計図通りに出来なかった不良たんぱく質も処理しなければなりません。

オートファジーは、生命の誕生以来40億年にも及ぶ進化の過程で獲得した飢餓を乗り越えるための機能でした。飽食の時代となりました現代におきましては、オプティマルヘルスに近づく最も有効な手段の断食をすることによってオートファジーの恩恵に浴することが可能なのです。断食によるオートファジー機能で生じたアミノ酸は、エネルギー生産など生命活動を主動する酵素を直ちに産生でき生命維持のみならず病気治し、健康維持、美容、長寿に貢献が期待できるのです。

美容と健康の秘策 ファスティング

COVID19の蔓延による緊急事態宣言期間中を利用して、過去のファスティングで宿題として残っていました次の項目を解明したいと思い、測定器と体重計を用いてデータ収集を行いました。

  1. ① 脂肪酸を燃やすためにはグルコースが必要といわれるが、それはどこから得るのか?
  2. ② 美容と健康の増進に期待できると思われる、オートファジーの始まるタイミング終わるタイミング。
  3. ③ 低血糖による生命リスク。

このグラフは、5月19日夕食から5月25日朝食までの133時間自宅で行いましたファスティングのデータです。
最初の3日間は梅干しと白湯のみの本断食、残り2日間の朝は野菜と果物のスムージーを大き目のコップ2杯、夜すりおろし大根・すりおろしきゅうり・すりおろし人参、最後の日は人参の代わりにアボガド1個の半断食にしました。

※ 血糖とは、血中に存在するグルコース(ブドウ糖)のことです。フルクトース(果糖)も同じ糖ですが、血中のフルクトースは血糖ではありません。

人間が生きている限り血糖は存在します。生命維持にはエネルギー(ATP:アデノシン三リン酸))が必要で、ATP産生装置のクエン酸回路は原料が枯渇するまで回転し続けています。
ATPの原料は、三大栄養素(糖質、脂質、たんぱく質)やケトン体(注1)です。これらがクエン酸回路に入る前には必ずアセチルCoA(注2)に変換されています。これがクエン酸回路の最終産物オキサロ酢酸(注3)と酵素の働きにより結合しクエン酸となり、回路を回転(注4)させます。

①の答えは、常時血中に存在するグルコースでした。
脂肪酸の燃焼には酸素が必要です。その酸素を細胞に届けるのは赤血球です。赤血球はミトコンドリアを持っていませんので、エネルギー産生は細胞質(注5)の解糖系(注6)で得られるATPのみです。脂肪酸を燃やすためにはグルコースが必要といわれる理由です。

グラフの1日目朝前のデータは、前日の夕食後13時間経過後の血糖値とケトン値です。食後3時間前後で血糖値は食前の値に戻ると言われますが、次の食事まで血糖を維持するのは肝臓に蓄えられているグリコーゲン(注7)です。貯蔵量は120g前後ですので、10時間程度で消費されてしまいます。その後は、肝臓内の脂肪酸をエネルギー源にするようですが、初期段階の血糖値維持にはオートファジー(注8)で得たアミノ酸が糖新生に利用されるのではないかと思われます。

1日目昼前のデータでは、血糖値が朝前より上昇(83→94)しケトン値は減少(0.5→0.3)しています。朝7時に梅干し1個と白湯を摂っただけですので、オートファジーで得たアミノ酸が糖新生(注6)の原料になったと考えられます。
前日の夕食から約18時間経過していますので、好転反応の強く出る人は細胞内の劣化あるいは変性したたんぱく質・病原性を含む不要細菌類の分解によって排出された毒素が血中を巡回し頭痛や吐き気・倦怠感など不快症状が出始める頃だと思います。
前回の食事後24時間を経過した1日目夜前は、血糖値77、ケトン値1.8です。
血糖値が80以下になりますと、急激にインスリン分泌が減少すると言われています。中性脂肪の分解が亢進し脂肪酸がATPの主な原料になりますと、ケトン体産生が次第に増えます。

② オートファジーは肝臓グリコーゲンが減少しインスリン分泌が急激に低下した頃始まり、好転反応が解消する時点で完全に終わるのではないかと思われます。
2日間断食を行えば、細胞内の不要になったたんぱく質や細菌類は分解され、遊離アミノ酸になると考えて良いのではないでしょうか。

2日目、3日目は血糖値が50~70、ケトン値3.0前後で推移しています。
70~65になりますと血糖値を増加させるホルモンのグルカゴン(注9)とアドレナリンが、65~60では成長ホルモン、60以下ではコルチゾールが分泌され糖新生により血糖値低下を抑制すると言われます。
3日目の夜前、血糖値47に低下した時点で急激なβ酸化が行われ、アセチルCoAの産生がクエン酸回路の最終生成物オキサロ酢酸量をはるかに超えてケトン体産生が急増し5.0となりました。

全身の細胞で中性脂肪の分解が順調に進み、肝臓に送られる脂肪酸が急増したためと考えられます。β酸化で得たアセチルCoAをケトン体に変換する酵素は肝臓にありますので、全身で中性脂肪の分解が亢進しますと肝臓に送られる脂肪酸の量も増加します。
ちなみに、肝臓にはケトン体を利用する酵素がありません。他の組織細胞のエネルギー源にするために、生成しましたケトン体の全量を血液中に放出して分配します。
同時に糖新生の材料になるグリセロールも急増し、4日目朝前の血糖値が70となりケトン体値も5.1のピークとなりました。
健常者の場合、このように数日の断食では③の低血糖リスクは生じません。

4日目昼前、血糖値が68、ケトン値1.1とケトン値が急減しました。これはグリセロールが糖新生の主な材料に使われた結果と考えられます。グリセロールによる糖新生経路はオキサロ酢酸を経由しないため、オキサロ酢酸がアセチルCoAと結合しクエン酸となり回転に参加しますのでケトン体産生に使用される量が減少すると考えられます。グリセロールはオキサロ酢酸を経由せず、グリセロール3リン酸・ジヒドロキシアセトンリン酸を経由して糖新生経路に入ります。

4日目夜後の血糖値が153と高くなりました原因は、大根おろし・キュウリおろし・人参おろしを別々に食したため、高GI(注10)である人参の影響が強く出たためではないかと思います。
5日目夜は人参の代わりにアボガド1個にしたところ、血糖値が132となりました。

下の表は、ファスティング中計測した項目別数値です。体重は減少していますが、体脂肪率と内臓脂肪率はほとんど変化していません。これは脂肪がエネルギー産生に使用されていることを示しています。
また、筋肉量と基礎代謝の変化もあまり無いようです。筋肉量が落ちますと基礎代謝も落ちるはずです。即ち、飢餓や断食時グルコースの供給が途絶えますと最初に脂肪酸をエネルギー源として、人体にとって最も必要なたんぱく質を最後まで温存するようにプログラミングされていることが分かります。

当NPO法人日本酵素栄養学協会の滝野理事は、毎年実施されているファスティング合宿で参加者のデータを多数収集し素晴らしい分析をされています。
その結果によりますと、約6割の人が体重の減少にもかかわらず体脂肪率が増加し、筋肉量・基礎代謝ともに減少傾向にあり、1割は体重不変かわずかに増・体脂肪率水分率増で筋肉量が減少していたと述べておられます。
これは合宿に参加するような健康と食べ物の関係を理解し日頃から気を付けている人達であっても、約7割の人の血中ビタミンCレベルがオプティマムヘルス(注11)維持に必要な量以下であることを物語っていると考えて良いのではないでしょうか。一般的には、さらに低いと考えられます。

脂肪酸を燃焼してエネルギー源であるATPを産生するためには、細胞内のエネルギー生産工場であるミトコンドリア内に脂肪酸を運び入れなければなりません。この運搬役はアミノ酸のリシンとメチオニンから生合成されるカルニチンです。生合成は数段階の酵素反応を経て行われますが、補酵素としてビタミンCが必要なのです。また、皮膚や骨・関節などの健康に直結するたんぱく質のコラーゲンは、構成成分の1つヒドロキシプロリンを生成する酵素プロリルヒドロキシラーゼの補酵素としてビタミンCを必要とします。

今回のファスティングで得たデータを解析しました結果、月に1回程度丸1日から丸2日の全断食を実施してオートファジー機能を活用すれば、健康維持と病気予防にかなりの効果があると感じました。
免疫を担当する白血球のうち好中球(顆粒球の一種)の寿命は4時間から8時間、単球(マクロファージも同じ)は10時間から20時間といわれます。リンパ球は100日から300日と長いのですが、ファスティングによりオートファジー機能が活性化され細胞内が浄化されてウイルス消去能力も最大限発揮できるようになると考えられます。

但し、糖尿病や持病で投薬中の方等は全断食を避け、GI値の低い野菜や果物を少量摂取する半断食にして糖新生を抑える工夫が必要であると思います。
糖尿病の場合、グルコース取り込みにインスリンを必要とする心筋や骨格筋ではグルコースの供給が滞るため既に脂肪酸によるエネルギー産生がメインになっています。中性脂肪分解により生産されたグリセロールは、糖新生の材料になりますので血糖値を上昇させる結果につながります。赤血球、脳などはインスリンを必要とせずにグルコースを取り込みエネルギー産生しますので、ケトン体が血中に溢れケトアシドーシスとなり血液を酸性に傾かせます。
各種薬剤には必ず副作用があり、人体にとって毒物であることは皆さんよくご存じだと思います。これを解毒する肝臓は、糖新生やケトン体産生の臓器でもあるのです。即ち、投薬中の方が全断食しますと肝臓は解毒のために代謝酵素や補酵素をフル稼働させて過負荷になっていますため、糖新生が不十分となり低血糖になるリスクが増加すると考えられます。

ATPの生合成、脂肪酸をミトコンドリアに誘導するカルニチンやアドレナリンの産生には補酵素としてビタミンCが必要です。コロナウイルスを消滅させる過酸化水素の産生にも、血中に高濃度のビタミンCが必要です。ノーベル賞を2度授与されたアメリカの化学者ライナス・ポーリング博士をはじめとする多くの学者が、1日5~10gのビタミンC摂取を勧めています。
無農薬有機農法で野菜類を栽培している農場主は、冬の野菜であるほうれん草を夏に栽培すると冬に比べてビタミンC含有量が5分の1になると話してくれました。ほうれん草を夏に収穫するためには大量の有機肥料を施肥する必要があり、必然的に硝酸態窒素(注12)の残留量が多くなります。原因は不明ですが硝酸態窒素とビタミンCの生成量は反比例の関係にあることが確認されています。
いずれにしましても消費者・生産者とも、旬の作物を地産地消するように心掛け、必要な栄養素は食べ物から全て摂取できる状況を取り戻さなければなりません。
ヒトは食べ物で出来ていますので、自分の食べたものが血となり肉となることを再認識する必要があります。

日々の食事は、酵素食(プラントベース・ホールフード・ローフード)を中心に組み立てビタミンやミネラル、抗酸化物質を摂り入れますと、健康維持・病気予防に有効であると同時に美容・アンチエイジングにも効果が期待できます。
しかし残念なことに最近の農産物は消費者のニーズに合わせ、形を良くし大きさを揃えて購買意欲を掻き立てることに重点が置かれ栄養素の含有量は二の次になっています。
従って、例えばビタミンCのように特に不足が懸念される栄養素は、サプリメントで補う必要があると考えています。
ヒトの個体差はかなり大きいと思われますので私のデータを参考にしていただき、各自に適した方法を見出していただければ幸いです。


(注1)ケトン体

飢餓や断食時などでグルコースが不足気味になり、血糖値が80以下に低下し急激にインスリン分泌が減少しますと、中性脂肪が脂肪酸とグリセロールに分解され脂肪酸が主なエネルギー源になります。
肝臓では脂肪酸から得たアセチルCoAがクエン酸回路の回転に要する量を上回りますと、即ちグルコース量が少なくなりオキサロ酢酸産生量減少の場合はミトコンドリア(細胞内のエネルギー生産工場)内で酵素HMG-CoAシンターゼの働きにより脂肪酸の分解で生じたアセチルCoAを原料としてケトン体(アセト酢酸・βヒドロキシ酪酸・アセトン)が生成されます。
HMG-CoAシンターゼ:HMGCS(ヒドロキシ・メチル・グルタリル・CoA・シンターゼ)は、肝細胞のミトコンドリア内のみに発現し、他の組織細胞では発現しません。ところが肝臓には肝細胞以外の細胞が有するケトン体を分解してアセチルCoAにする酵素、スクシニル-CoAトランスファラーゼがありません。
したがって肝細胞はケトン体の産生はできますが利用する事ができず、また他の組織細胞はケトン体をエネルギー源として利用できますが産生することはできません。
ケトン体は、アセト酢酸・βヒドロキシ酪酸・アセトンの総称です。脂肪酸は血液脳関門を通過できませんが、ケトン体は通過できますので飢餓や断食時に脳のエネギー源として使用可能です。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

(注2)アセチルCoA 

ビタミンB類のパントテン酸を構成要素とする補酵素Aと、酢酸が結合した有機化合物です。グルコースの解糖系で得たピルビン酸や脂肪酸のβ酸化などから産生され、エネルギー(ATP)を生み出すクエン酸回路を回す原料です。余剰分は脂肪酸生合成に回され、中性脂肪を生成しますので過剰は肥満に直結します。
飽食時グルコース量がエネルギー生産やグリコーゲン合成に必要な量を上回った場合は、アセチルCoAはオキサロ酢酸と結合しクエン酸となった後回路の回転に参加することなくミトコンドリアを出て脂肪酸を合成します。

アセチルCoA
メチル基(-CH3)とカルボキシル基(−COOH)が結合した酢酸と、補酵素Aが脱水縮合した構造です。

CoA(補酵素A)
構造は右側がアデノシン二リン酸、中央がパントテン酸、左はシステインの分解生成物システアミンです。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

(注3)オキサロ酢酸

クエン酸回路の最終生成物で、解糖系やβ酸化で得たアセチルCoAと結合してクエン酸になりクエン酸回路を回転させます。

オキサロ酢酸とアセチルCoAからクエン酸

β酸化によってできたアセチル-CoAは3つの運命をたどります。

  1. 解糖によって生じたアセチル-CoAとともに、クエン酸回路で酸化( oxidized )されてCO2とH2Oになる。
  2. コレステロール(cholesterol)やほかのステロイド( steroid )合成のための前駆体となる。
  3. 肝臓においては、長期の絶食および飢餓時において重要なエネルギー源となるケトン体( ketone body :アセト酢酸および3-ヒドロキシ酪酸)の合成に利用される。

出典:hakkou.kuni-naka.com

(注4)クエン酸回路

酸素を取り入れてエネルギー生産を行う、生物全般に共通してみられる好気的代謝の生化学反応回路です。TCA回路、TCAサイクル、クレプス回路などとも呼ばれます。
解糖や脂肪酸のβ酸化などによって生成されるアセチルCoAが組み込まれ、電子伝達系で用いる電子伝達体(NADH)などを生じさせ効率よくエネルギー生産をするシステムです。細胞の、ミトコンドリア内で働いています。

オキサロ酢酸とアセチルCoAからクエン酸

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

(注5)細胞質・細胞質基質

典型的な動物細胞の模式図

細胞膜で囲まれた部分のうち、細胞核②以外の領域を「細胞質」といいます。
細胞質の中で、下に示す細胞小器官を除いた部分は「細胞質基質」と呼ばれます。

①核小体 ②細胞核 ③リボソーム ④小胞 ⑤粗面小胞体  ⑥ゴルジ体 ⑦細胞骨格 ⑧滑面小胞体 ⑨ミトコンドリア ⑩液胞  ⑪細胞質 ⑫リソソーム ⑬中心小体

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

(注6)解糖系・糖新生

エネルギー源の糖質を摂取しますと消化器官でグルコース(ブドウ糖)に分解され、小腸で吸収し肝臓を経由して血液に入り各細胞に分配されます。
解糖系は細胞の細胞質基質で酸素を使用せず、グルコースを数段階の代謝を経てピルビン酸に変化させる反応系を指し「嫌気的(無酸素状態)解糖」と呼んでいます。
この代謝過程でグルコースに含まれている高結合エネルギーを、生物が使いやすい形のATP(Adenosine_triphosphate)に変換します。
1分子のグルコースから2分子のピルビン酸を産生して、ミトコンドリア内のクエン酸回路に投入します。
解糖系では、2分子のATPを使用し4分子のATPを産生しますので2分子のATPが生じたことになります。

糖新生
長時間糖摂取が途絶え血糖値が70~65に低下しますと膵臓からグルカゴンが分泌され、糖新生が始まります。材料は糖質以外のピルビン酸、乳酸、糖原性アミノ酸、グリセロールなどで、血糖となるグルコースを産生します。
グルコース6リン酸をグルコースに変換するG6Pase(グルコース6フォスファターゼ)という酵素は、肝臓と腎臓に在ります。糖新生は主に肝臓で行われ、激しい飢餓状況下では小腸及び腎臓でも行われますが他の臓器細胞では行われません。
糖新生経路は解糖系経路のほぼ逆になりますが、次の3段階では別経路になります。

  1. ① ピルビン酸←ホスホエノールピルビン酸
    糖新生ではピルビン酸が一旦ミトコンドリアに入り、オキサロ酢酸を経てホスホエノールピルビン酸に変換される経路になります。
  2. ② フルクトース-1,6-ピルビン酸→フルクトース-6-リン酸
    働く酵素が違います。解糖ではPFK(ホスホフルクトキナーゼ)という酵素が働きますが、糖新生ではFBPase(フルクトース1,6ビスホスファターゼ)という酵素です。
  3. ③ グルコース-6-リン酸→グルコース
    糖新生の最後グルコース変換には、肝臓と腎臓にのみ存在する酵素グルコース-6-ホスファターゼが働きます。

中性脂肪の分解により生じたグリセロールを、糖新生に利用できるグリセロール-3-リン酸に変換する酵素GK(グリセロールキナーゼ)は、脂肪組織にはほとんど存在しません。そこでグリセロールは肝臓に集められ、グリセロール-3-リン酸を経てジヒドロキシアセトンリン酸に変換され糖新生経路に合流します。

断食時グルコースが枯渇しますと主なエネルギー源が脂肪酸になり、オキサロ酢酸が少なくなった分アセチルCoAが余りますため脳のエネルギー源に使用できるケトン体が産生されます。
糖新生に使われるグリセロールは乳酸やアミノ酸と異なり、ピルビン酸→オキサロ酢酸の経路を経由せず糖新生経路に合流するのです。従って、中性脂肪の分解が進み糖新生にグリセロールが多く使われるようになりますとアセチルCoAとオキサロ酢酸の結合機会が増し、ケトン体産生が減少するのではないかと考えています。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

(注7)グリコーゲン

グリコーゲンは食後など血糖過剰時、ブドウ糖を一時的に貯蔵するため多数結合させた高分子です。肝臓におよそ120g、骨格筋に約300g貯蔵されます。肝臓のグリコーゲンは必要に応じて血糖になりますが、骨格筋のグリコーゲンは血糖にはならずその場でエネルギー源として消費されます。

上図の丸い玉、1つ1つがブドウ糖(グルコース)です。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

(注8)オートファジー

オートファジーのオートはギリシャ語で「自分」、ファジーは「食べる」という意味で、これらを組み合わせた造語を日本では「自食作用」と呼んでいます。

2016年ノーベル医学・生理学賞を受賞されました大隅良典博士の受賞理由は、細胞内の分解系であるオートファジー分子機構の解明でした。
細胞が飢餓に直面した場合、生命維持のために必要不可欠な物質はたんぱく質です。たんぱく質合成には20種類のアミノ酸が必要ですが、実は自分の体内から調達できるのです。その仕組み解明が評価され、受賞につながったとのことです。

人体の構成成分は、約60~70%が水分で残りの内約半分がたんぱく質といわれます。飢餓に直面し栄養素の摂取ができない状態で、生き延びる為に必要不可欠な物質はたんぱく質(私は、酵素とヘモグロビンの主要素であるグロビンであると考えています。)です。

オートファジーは、40億年に及ぶ進化の過程で人類が獲得した飢餓を乗り切るための機能であることが解明されました。
細胞内のたんぱく質を一網打尽に分解して、最も必要とするたんぱく質合成に必要なアミノ酸を確保する飢餓に打ち勝つ仕組みです。
最近の研究では、アルツハイマー病を始めとする神経変性疾患、感染症、心疾患、がんの抑制など、生命を守る多彩な機能を持つことが次々と明らかにされつつあります。
美容や減量にも効果が期待できますので、機能をよく理解して試されると良いのではないでしょうか。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

(注9)グルカゴン

29のアミノ酸が連結している(ペプチド)ホルモンの一種で、主に膵臓のランゲルハンス島にあるA細胞(α細胞)で生合成・分泌されるほか消化管からも分泌されます。インスリンは血糖値が高くなるとランゲルハンス島B細胞から分泌されグルコースを細胞に取り込んで血糖値を下げますが、グルカゴンは血糖値が低くなると肝細胞に働きかけグリコーゲンを分解して血糖値を上げるように促し低血糖を防止する働きをします。

出典:japaneseclass.jp

(注10)GI値(Glycemic index)

炭水化物50グラムを摂取した際の血糖値上昇の度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。血糖値の時間変化をグラフに描き、その曲線が描く面積によってGI値を計算します。

GI値=(「試料」摂取時の血糖値上昇曲線の面積/「ブドウ糖」摂取時の血糖値上昇曲線面積)× 100

食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取2時間までの血液中の糖濃度を計ったものです。オーストラリアのシドニー大学ではグルコースを基準とした場合、GIが70以上の食品を高GI食品 56~69の間の食品を中GI食品 55以下の食品を低GI食品と定義しています。
GI値とはブドウ糖100gを摂取した時の血糖値上昇度を100%として、ブドウ糖100gと同じカロリーの食品を摂取した時、ブドウ糖100gより血糖値の上昇が大きければ100以上の数字で表わされ、ブドウ糖100gより血糖値の上昇が小さければ100以下の数字で表わされます。

出典:岩下聡、桜井政夫、陶山徹、早瀬秀樹、満園良一、山下大介、濱田広一郎.
大豆配合焼き菓子の血糖応答とそのセカンドミール効果に関する検討
薬理と治療5(36)別冊,ライフサイエンス出版;2008

分類 GI値
低GI 55以下 ほとんどの果物及び野菜、豆類、全粒穀物、ナッツ、フルクトース及び低炭水化物製品
中GI 56–69 全粒粉製品、バスマティ(長粒米の一種)、サツマイモ、砂糖(スクロース)
高GI 70以上 ジャガイモ、スイカ, 白パン、白米、コーンフレーク、シリアル、グルコース、マルトース

(注11)オプティマルヘルス

健康診断を受けた場合、健診データが統計資料に基づいてあらかじめ決められた範囲内にあるとき「健康」(health)と判定されます。しかし健診直後であっても、頭痛がするとか肩こりがひどいあるいは眩暈がするなど異常を訴える人は少なくありません。
下の図のグレーゾーン(未病の状態)であっても、「健康」と判定されています。
オプティマルヘルスは、年齢に相応した最高の心身状態をいいます。

出典:丸元康生著『ビタミンがスンナリわかる本』

(注12)硝酸態窒素

たんぱく質は植物にとっても重要な栄養素であり、成長に不可欠です。たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸には、窒素を含むアミノ基(‐NH2)があります。
硝酸態窒素はたんぱく質などを含んだ有機物が土壌中の微生物によって分解され、硝酸イオン(NO3-)など無機態になった最終生成物です。植物が最も効率よく吸収できる形態ですので、肥料として使用されます。

下の表1は、埼玉県園芸試験場 園芸環境部が調べた結果です。
ほうれん草のビタミンC含有量は冬116夏35.8硝酸濃度冬2600夏7800となっています。